モリゾーの行方

「あ〜疲れた。長かったねえ万博」

色褪せた青の作業着に身を包んだ人間が横たえる僕の横で話ている。

「祭りの後の静けさとか言って呑気に上から眺めてる奴らはいいよなあ。」

ぷかあっと煙草の煙をはく。その煙の行方を横目で見てる僕。うわあっ、万博開催中は子供達の人気を博し、神のような扱いを受け、念入りにブラッシングされていた僕の自慢の頭髪をかすめていったよ!でももう動けないんだ。シンデレラストーリーさ。僕はもうお払い箱でメノール・キベンスキーよりも価値のないモノさ。

「うわっ、げえーさらにメンドクセエ!どうするよこいつ。めちゃくちゃ重そうだぜ。石添、これお前んちの玄関にでも置いとけや。何?いらねえって、てめえ。えっ、うち?いらねえよこんなもん。なんか目が気持ちわりいし。名前だせえし。なんかくせえし。え〜いっ、さすらいの〜、タマモクロスキーック」

うわあっ!いきなり蹴るなんて痛いじゃないか!君達僕を誰だと思っているんだ!万博一の人気者モリゾー様だぞ!あっ、一番人気はキッコロか。すると僕は二番?いや待てよ、二番は人型ロボット『ギレ・ロカッチャ』の可能性があるなあ。じゃあ三番か?いやいや三番はやっぱり恋する鉄道『コビー嬢』だろ。う〜んじゃあ僕は四番!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

ホントに僕は万博で人気者だったのだろうか。確かにこの薄汚れた三下が言う様に顔はちょっと気持ち悪いし、名前も変だし、うんぬんかんぬん・・・・。

泣きたいときに涙が出ない。一体僕はなんだったんだろう。

「うちの子供がさあ、こいつの二分の一人形買ってきたんだよ。まあ親の俺としては気持ち悪いながらこう思うわけよ。ぬいぐるみ買うなんて珍しいなあ、そんなにこいつが好きなんだ、ってな。ところがさあここからが流石俺の息子ってとこよ。俺がヒロちゃんそのオニンギョ可愛いねえ、って言ったらよお、え〜パパ見る目あんのお、とか言っていきなりポケットからカッターナイフ出してモリゾー君サヨーナラよ。へへっ」

うぅ・・・・・・・・・・

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 僕は運ばれている。目の前にはベルトコンベアー、その先には緑色したペットボトルの山