頭の中の世界が本物の世界を一周し振り出しに戻る
ピーチクパーチクスズメさん
僕の右手にお乗りなさい。
あっちは恐いお化けが出るから
そっちに行くのはおよしなさい。
握りつぶしはしないから
僕の右手に乗りなさい。
ちゅんちゅらちゅちゅちゅ
ちゅんちゅらちゅ
絶対つぶしはしないから
お願いだからお乗りなさい
と鼻歌を唄いながら僕は虹色に瞬くロードを今日も歩いている。気持ちがいいのでふんぞり返ってみると首はぐにゃりと折れ曲がり、後ろを歩く人と目が合う。
「今日もいい天気ですねえ。」逆光にも関らず目だけがぎょろりと物語る。彼はこの瞬くロードの常連さんである。
「ははは、子ども騙しは通用しませんよ。」僕の言葉が微笑して上がった口の端を滴り落ちる。流し目で膝まで伸びた彼の犬歯を見ると虹色の光を映した涎の一滴が垂れそうだ。
その滴が落ちるか落ちないかの瀬戸際、僕はにゅるりと首を延ばした。
ぴちょんっ。。間一髪。滴は僕の左目に落ちた。
その瞬間ふわっと眼球を包み込む虹色の世界が僕の眼前に広がる。
「気持ちがいい。僕は何をしてしまったんだ。気持ちがいい。浅はかじゃない僕の思慮深さは。気持ちがいい。ではないか。気持ちがいい。・・・」
僕はその世界に酔いつぶれどんどん丸まっていった。小さくなる小さくなる。逆に全てが大きくなる。僕が小さくなっているからではなく同時に全ての物が大きくなっている。
びゅーん!飛び交う砂つぶて。僕を包んでいた虹色の世界は一瞬にして暗闇で目が見えない恐怖の世界へと変わった。ガタガタと自然に歯が鳴る。その音は鳴るたびに二乗三乗四乗と無限の広がりをみせる。
「やめてくれ!頭が割れてしまう!やめてくれ!やめてくれ!」
その音はやむ事を知らず大きくなる。不条理な環境で一方的に大きくなる音。
「もう限界だ・・・ゴメンナサイ」
ぱーーーーーーーーん!音は僕の頭の中で膨張し、臨界点を超えた。僕の頭は割れ、四方八方に飛び散った。
じゃあ一体この僕はどこから考え、どこから思っているのだろう。それは分からずとも何か見える。目のない僕にも。
散った僕の肉片が一つの光に吸い込まれていく。肉片は光に入る瞬間砂になり、サラサラと心地のいい風に乗り消えていった。
「形のない僕を、自分でも存在の証明がなくなった今の僕を置いて行かないでおくれ。置いて行かないで」
そう思うと次の瞬間、すうっと光にbokuも吸い込まれた。心地のいい風は全ての破片を集め僕を元の形に戻した。
空から声が落ちてきた。「君はもっと回らなくちゃダメだ。私は認めない。」
僕は再び歩き始めた。限りない輪の中を。
僕の頭の中の世界が本物で何が悪い。